2023-01-30

三線のツメの手入れとツメの素材の話

三線のツメの手入れや素材の話

はんこ屋を営む古くからの友人と食事をする機会があって、「はんこも三線のツメも、材料は水牛の角(ツノ)」と言う共通の話題で盛り上がりました。

盛り上がったと言っても、はんこ屋さんは水牛の角を加工して販売するプロ、我々三線弾きと言えば、いちユーザーでしか無く、教えて貰ってばかりですが、、、

水牛の産地の話とか、かなり楽しい話を聞けたのですが、とりわけ興味深かったのが三線のツメの手入れ、メンテナンスの方法です。

結論からいうと、三線のツメのメンテナンスは不要、と言うこととなりました。

天然素材は乾燥に弱いということ

三線のツメの素材は、今ではベークライトやアクリルなどの樹脂素材からプラスチックのもの、木製や高級な物だとクジラの歯に象牙、様々な物が使われていますが、とりわけ多いのが、水牛のツメだと言うのは、はんこも同じだと言います。

一つ一つの色の違い、模様の違い、重さの違い、天然素材ならではの個性が楽しめると言う話なのですが、天然素材が故のウイークポイントとして、乾燥に弱いと言う事が挙げられます。

水牛素材のはんこは、年に一度か二度で良いので、台所に有るオリーブオイルなどの、植物性のオイルを染み込ませた布などで拭いてやると良いそうで、特に乾燥する冬場にやって欲しいとのことです。

三線工房でツメのお手入れについて尋ねてみた

年に一度ぐらいは、乾燥のきつい冬場にオイルを塗ってあげると言う水牛ハンコの手入れ方法を教えて貰ったので、せっかくなので、我らが三線工房きよむらの清村師匠に、ツメはどの様にメンテナンスするのか?尋ねて見た所、

一言「しないさー」でした 笑

はんこ屋さんの、水牛はんこの扱いをお話した所、何年も放置してる使ってないツメならそう言うことをしても良いかと思うし、実際にヒビの入ったツメが、時々仕入れた際に交じる事があるのは、要は乾燥と言う話なんだろうけれど、

常に触ってるツメだと、てぃーあんだー(手の脂)を常に与えてるってことになるでしょ、だからメンテナンスフリーさ、

ただ、黒いツメは、指紋とか汚れが目立ったりするのも本当なんで、時々手ぬぐいで拭いたりはする、

他にも、ツメは長く使ってるとやっぱり擦り減ってくるんで、爪先を削り直したりして整えることもある、と言うメンテナンスのお話をいただきました。

水牛に付いて

ここからは完全にお手入れには関係の無い水牛についての余談です。

水牛の種類

三線のツメの手入れや素材の話

三線のツメの手入れや素材の話

水牛には黒いツノを持った、黒水牛(アジアスイギュウ)と、素材的に最高級だと呼ばれる白っぽい角のオランダ水牛(ヨーロッパスイギュウ)の二種類が、主にはんこや三線のツメ、アクセサリーなどに加工されます。

見た目の違いもあって、画像は石垣島の離島、竹富島の牛車観光で働く水牛。

角が横に大きく伸びてるアジア水牛(下の画像)、一方ヨーロッパ水牛の角(上の画像)は、山羊の様にくるりと丸まったり、個体によっては左右の角が合わさってハートの形みたいになるんだと、牛車観光では説明されました。

水牛の角の成分

三線のツメの手入れや素材の話

水牛の角は、硬いタンパク質を主成分として構成されていて、硬いながらも三線のチルに絡む粘りがあり、ツメの適材として使用される様になったのでしょう。

クリーム色ベースのオランダ水牛の方が、黒水牛よりも一割程割高で、オランダ水牛に見られる茶色の筋は「ふ」と呼ばれ、ほとんど ふ の入らない物が最上級の素材とされているとのことです。

沖縄の水牛の歴史

沖縄には、戦後の1930年代に台湾から石垣島に入ってきた60頭あまりの水牛が始まりで、粗食にも耐える強い労働力として当時は重宝されましたが、今は上で紹介した観光牛車があまりにも有名です。

現在、沖縄の各地に居る水牛はこの時の子孫になるそうで、三線のツメの素材は東南アジアなどからの輸入に頼ることが多く、もっと言うと、ツメ自体も輸入されているのが多いとの話です。

こういう資料を見ると、水牛素材のツメは三線文化が芽生えた王朝時代から続くものでは無く、戦後に生まれたものなのかな?と思いつつも、宮廷音楽として賓客をもてなすと言う三線が発展した背景を思うと、中国や東南アジアとの交易を盛んに行っていた王朝時代には、水牛の角や象牙などが持ち込まれて居たのではとも想像出来ます。

三線のツメの手入れや素材の話

三線を一般の市民が三線を手にする様になった頃からは、山羊や牛、竹製のツメなど、何でもツメにしたと言う話を見聞きする中で、水牛の角を使っていたという話は聞かないので、水牛素材のツメが高級素材だったのは間違い無いでしょう。

まとめ

三線のツメの手入れや素材の話

何気なく、毎日手にしているツメもこうして話を聞くと、愛着が湧くと言う物、機会があれば、沖縄へ行った際に、実際にツメを削っている様子を取材して紹介出来ればと思います。

象牙などがそうであった様に、水牛の角もやがては素材自体が入手困難になり、高価な物になって入手できなくなる、そんな話をしていたら、先生はもう一生分のツメはある、とおっしゃりました 笑

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