女流歌人 恩納ナビー【恩納松下の歌碑】
恩納ナビーの詠んだ、恩納松下の歌碑を尋ねて恩納番所跡へ行って来ました。
自分が知る数少ない琉球古典の唄、恩納節に出てくる恩納松下です。
琉歌 恩納松下
恩納松下に 禁止の碑のたちゆし
恋しのぶまでの 禁止やないさめ
恩納松下の番所の松の木の下に 禁止の札が立てられたけれど、まさか、恋することまで禁止しようと言うつもりか!
と言うのが歌意になります。
禁止の札が立てられた当時、首里から離れた農村地を中心に、若い男女が集って歌い踊ると言う「毛遊び」が娯楽として盛んに行われていましたが、ある時、中国から琉球にやってきた冊封使の一行が北部の名所巡りの際に恩納番所で宿泊することになり、毛遊びと言う風紀の乱れを見せたく無いと言う理由から禁止の札を立てました、
その事に対する嫌味をナビーはこうして琉歌にしたのです。
この時代に、役人に楯突く、しかも女性と言う立場で。それが許されたんだと言うのは沖縄ならではの寛容さがこの時代にあったのでしょうか?
と恩納ナビーの謎は深まるばかりですが、碑を前にして、改めて良い歌だと恩納節が好きになりました、琉歌巡りあるあるな話です。
番所前の松の木は昭和30年に松くい虫の被害により枯れてしまって、現在ある松の木は二代目だと言います。画像では分かりづらいかも知れませんが、初代の松の木の切り株が左横に残されているのが判りますか?
恩納ナビーの代表的な琉歌
謎多き女流歌人、恩納ナビーの代表的な琉歌を紹介します。
仮に、彼女が架空の人物だとしても、情熱的な琉歌は間違いなく恩納ナビーの歌として既に圧倒的な存在感を示し、今風に言えば、初音ミク見たいな存在として有りだよね、と私などは思ってます。
姉べたや良かち シヌグしち遊で
わした世になりば 御止さりて
姉さんたちは良かった、毛遊びなどで遊ぶことができたのに、私たちの時代はそれが禁止された。
恩納岳あがた 里が生まり島
森ん押し除きてぃ 此方なさな
恩納岳の向こう側は愛しい彼の生まれた村、あの山を押しのけてこちらに引き寄せよう。
波の声もとまれ 風の声もとまれ
首里天がなし 美御機拝ま
波の音よ静まりなさい。風の音も静まりなさい。国王さまのお顔を拝みましょう。
恩納ナビーの生い立ち
恩納村の農民の娘として産まれ育った恩納ナビーと呼ばれる女流歌人が活躍したのは琉球王朝 尚貞王(しょうていおう)の時代だそうです。
だそうと言うのは、本当の所は良く解っていないからで、実在の記録は無く、残されているのは今に歌い継がれる琉歌だけ、謎の多い女性ほど素敵だと言うのは本当だと思います。
この時代は琉球文化の黄金時代とも呼ばれ、その中の一つである琉歌は庶民の間でも盛んに詠まれ、こうして恩納ナビーの様な女流歌人が登場した訳です。
恩納ナビー 誕生の地
恩納村のナビーさんと言うのは想像出来るけど、ナビーさんの本当の名字は?と道中の車の中で話題になりました。
この時代、農民の中で名字を使うのは一般的では無く、名前で呼び合い、屋号と言うのが合わせて用いられてました、画像は生誕の地の碑です。
「恩納ナビ 誕生の地 マッコウ家」と書かれてますが、マッコウ家と言うのがナビーの家号です。
家号は方言ではヤーンナーとか言いますが(ヤーが家、ンはの、ナーは名前)、要は家のあだ名みたいなもんで、仕事が鍛冶屋だったりすればカンジャーだったりマンジョーイ(バンザイ)とかハワイーとか面白いのも色々あって、沖縄では現在もヤーンナーが通用する地域は少なく有りません。
恩納ナビーの家には庭木などに使われるマッコウという木、ハリツルマサキがたくさん植えられていたからマッコウヤーのナビーなどと呼ばれていたハズです。
屋号に着いてはまるっと一記事書けそうなぐらい面白い話が沢山あるので、またの機会に!
昔の沖縄の女性の名前
屋号の話をしたので、名前の話も少しだけしておきます。沖縄に限らず、と言う話で、特に女性の名前は、生活に密着する物が多く、
内地でも、「ツル(鶴)」「カメ(亀)」「 マツ(松)」なんかが定番だったのは、なんとなく耳にしてきたと思いますが、
沖縄だと「ウシ(牛)」「カマ(釜)」「ナベ(鍋)」が内地のツル カメ マツ 以上に人気で、ナビーもナベが訛ってナビーなのです。
大好きな沖縄映画「ナビーの恋」のおばーが正にナベさんですね。
余談ですが、この同じ時代に行きた女流歌人に吉屋チルーが居ますが、チルーは「ツル(鶴)」です。
恩納松下の歌碑へのアクセス
恩納村のナビー巡りへ来たなら、近くには沖縄北部の有名な景勝地・万座毛(まんざもう)などもあり、退屈すること無く楽しめるかと思います。
画像は万座ビーチにあった恩納ナビー人形、恩納村もナビーは居てもらわないと困る存在のようです。
〒904-0411 沖縄県国頭郡恩納村恩納2571 番所跡
代表的な琉歌として
恩納岳あがた 里(さとぅ)が生まり島 森ん押し除(ぬ)きて くがたなさな
歌訳:愛する人は恩納岳の向こう、森を押しのけて引き寄せたい
などの情熱的な歌で知られています
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